腱板断裂に対する低侵襲手術

− 関節鏡視下腱板修復を中心に −

 

当院の関節治療センター(千葉県柏市)が担う重要な役割の一つは、肩の痛み・肩関節に関する諸症状でお困りの方に対して正確に診断し、治療方針を導き出すことです。これまでに整形外科専門医として肩関節痛を有する様々な病態の患者さんを診療してきた経験から、この疾患(腱板断裂)の課題は第一に“より早く的確に診断すること”。そして“一律に注射やリハビリなどの保存治療を行うのではなく、個別の治療目標に基づき方針を決定すること”です。様々な社会的背景(仕事や家事、病院への受診が困難等)のため手術を躊躇してしまい、クリニックなどでリハビリを長期間行った末に、結果として病状を悪化させてしまう方も少なくありません。

 

長期間、肩の痛みでお困りの方へまず最初にお伝えしたいこと、それは「痛みを放置せず、早期に医療機関を受診してMRIなどの適切な検査を受けていただきたい」ということ。そして、保存療法(関節内注射やリハビリ、ホームエクササイズなど)で治癒が期待できる五十肩(肩関節周囲炎)と、手術治療が必要となり得る腱板断裂などとを早急に鑑別しなければなりません。「まず病気についてよく知ること」、そして「自分から医師に相談する」前向きな姿勢が大切です。

 

目次


肩の痛みについて


「四十肩、五十肩だろうから、しばらくしたら治るだろう」と考え、放置してしまう方が多いかもしれません。しかし、五十肩(医学的には肩関節周囲炎)と診断されている方の約半数肩関節拘縮(肩関節可動域の制限)を認め、約3割の方が腱板断裂(肩の腱が切れた状態)を生じていたとする報告があります。

 

特に注意しなければならないのは、肩の腱板(けんばん)が傷んでしまっている場合(腱板断裂)。長期間、腱板断裂による肩の痛みを放置したり、漫然と五十肩としての治療を続けたりしていると、徐々に肩関節の動きが制限されたり痛みによる日常生活に支障をきたしてしまうのです。

 

 

腱板断裂とその症状


腱板は肩深部にある4つの筋肉(棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋)から構成されており、肩関節を安定させ、動かすために重要な役割を果たしています

 

加齢に伴い強度が低下し、転倒や日常生活の動作等によって自然に断裂することがあります。

 

過去の研究から、ある程度の断裂になると自然に修復され治癒することはほぼなく、断裂によって生じた隙間が広がることで、徐々に病状が悪化することが分かっています。

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【代表的な症状】

 ・肩(腕)が挙がらない(吊り革を掴むことができない、洗濯物を干す、髪を洗うのがつらい)

・肩(腕)の挙げ下ろしの際に痛む

・夜間、肩が痛む、横になれない、寝返りがうてない、目が覚める

・エプロンや下着の装着時に痛む

・高いところに手が届かない

 

こうした症状を引き起こす腱板断裂は、若年者では転倒して手をついたり、肩を強打した場合に生じますが、40歳以降でははっきりした原因もなく、日常生活の中で自然に損傷したり断裂したりする場合が多いです。

 

 腱板は肩関節の骨と骨の間を通過しています(アニメーション参照)が、加齢により肩の骨(肩峰)に骨のトゲ(骨棘)ができてしまった方は、こうした自然断裂を起こしやすいとされています。

 

最近、多くみられるのが、この骨棘(骨のトゲ)を元々有しており、事故などの大きな外力が加わっていないのにもかかわらず、高いものを取ろうとしたり、布団を持ち上げたりといった一般的な生活動作で強い肩の痛みを生じ、腱板を傷めていることが判明するケースです。

 

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自然に治癒するまで我慢したり、マッサージで緩和させる、放置するなど自己判断での対処はリスクが伴います。誤った対処で症状が悪化する前にまず医療機関で診察を受け、適切な診断を受けることをおすすめします。

 

 

 

腱板断裂の診断と治療


問診や診察所見(疼痛誘発テストなど)だけで診断がつくこともありますが、すべての典型的な所見を併せ持つことは少ないです。

 

類似した症状を引き起こすことで知られる五十肩(肩関節周囲炎)は本来、除外診断(他の特異的な疾患の存在を否定すること)がなされた後に診断され治療されるものです。従って、腱板断裂に関する疼痛誘発テストが陽性である方で、消炎鎮痛剤や外用薬、関節注射によって症状が軽快しない場合、客観的かつ正確な診断のためにはMRI検査が必要不可欠となります

 

腱板断裂は大きく分けて、全層で連続性が途絶している完全断裂と、腱板の厚みの一部のみ途絶している部分断裂の2つに分類されます。

さらに断裂部の広がりによって小断裂から広範囲断裂に分類されます。

 

 

【腱板断裂サイズによる分類】

      小・部分断裂:〜1cm   

         中断裂:1-3cm  

         大断裂:3-5cm 

       広範囲断裂: 5cm〜    

 

治療は大きく分けて、保存療法(手術をしない)と手術療法になります。

 

 

【保存療法】

1)  局所安静(運動や仕事上の負荷軽減、スリング(三角巾)固定)

2)  消炎鎮痛剤、筋弛緩剤などの内服

3)  関節内注射(ヒアルロン酸、ステロイド) 

4)  運動療法(残存する腱板機能の強化、肩関節周囲筋の緊張緩和、関節拘縮(関節の動きが制限されること)の除去など)

 

があります。関節内注射と運動療法が最も効果的ですが、これらは根本的な治療ではなく、あくまで痛みを和らげ、肩を動かしやすくする対症療法です。

 

高齢の方では腱板が切れていたとしても特に不自由がない、無症候性腱板断裂の方が数割程度、存在することが報告されています。したがって、高齢の方では日常生活に不自由がなければ、まず保存療法を試みる方法もあります。

しかし、保存療法で症状が良くならない、または日常生活に不自由がある場合、手術療法を検討する必要があります。手術に踏み切るか保存療法で経過をみるのかは、患者さんの社会的背景(今仕事を休めるか、長期休暇まで我慢するのかなど)や肩関節MRIなど画像検査の結果、基礎疾患を含めた全身の状態などを総合的に考慮して決定します。

 


 ※ 完全(全層)断裂した腱板に対する再生医療についてPRP(多血小板血漿)や培養幹細胞(約100−200万円、自由診療)の注射が、鎮痛剤やリハビリによる治療効果(疼痛改善、機能回復など)を上回るというコンセンサスは得られていません。また、完全(全層)断裂した腱板が再生医療(PRP、培養幹細胞)によって修復され、画像(形態)的かつ機能的に回復するというコンセンサスも未だ得られていません。

 

 咋今、自由診療系クリニックHP上において、MR画像にて腱板の浮腫や変性、周囲滑液包の炎症とみられる所見を有する、肩関節痛の症例を腱板“損傷”として提示し、再生医療後のMR画像においてそれらの画像所見や痛み、可動域の改善がみられたことをもって、腱板組織が再生したと主張する施設に関して、問い合わせがありました。その程度の画像所見の変化や痛み、可動域の改善は通常の保険診療でもみられる現象であり、前述の再生医療による効果とは断定できない(腱板における一時的な浮腫性・炎症性変化からの回復やリハビリ効果による修飾の可能性有り)と回答しています。

 

 前述の再生医療に対する過度な期待は、あなたの肩を外科的に修復困難な病状へ陥らせたり、人工関節治療を要する腱板断裂症性肩関節症へ移行させてしまう恐れがあります。

 

 

【手術療法】

・腱板修復術(侵襲の大きい順に:直視下>Mini-open>>鏡視下)

・腱板前進術

・上方関節包再建

・リバース型人工肩関節置換術

 

以下の場合、手術療法を積極的に考慮します。

 

【手術適応 】 

有症状(肩の痛みや運動制限等)であることに加え、

 

1.若年者、趣味・スポーツや仕事などで肩をよく使う中高年〜高齢者

 

2.保存療法に抵抗性(中高年〜高齢者)

 

3.肩の引っ掛かり感や力が入らず肩(腕)が挙がらない(偽性麻痺肩

 

4.MRI検査で腱板断裂の範囲が拡大(悪化)している

 

 

 

腱板断裂(手術が必要な状態)を放置した場合


腱板断裂において手術が必要な状態をさらに放置すると、以下の理由のため治療が困難になる場合があります。

 

 腱板断裂を放置した場合

 

↓↓↓

 

腱板断裂サイズが増大し

軟骨のすり減りや可動域制限、筋力低下(筋萎縮・脂肪変性)などにより、

手術による機能回復が期待できなくなってしまうことが懸念されます。

 

 

 

 

   腱板断裂サイズの拡大(悪化)

前提として、過去の研究から腱板断裂の大きさが大きくなるほど、手術後の再断裂が起きやすいことが分かっています。

 

そのまま長期間が経過した場合、断裂した腱板(筋肉)が縮み(退縮)、筋肉が痩せてしまいます(筋萎縮・脂肪変性)。

腱板断端が元の付着部から離れることによって、手術後に腱板の修復部分にかかる負荷が増加し、骨への固着が遅れてしまったり修復材料(アンカー)の固定が破綻してしまったりするリスクが増大します。また断裂後、長期間が経過してしまったことによる腱板を構成する筋肉の萎縮や脂肪変性は、手術後に腱板機能不全を生じるリスクを高めます。

  

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   腱板断裂症性肩関節症

腱板断裂は長年にわたり放置することで肩関節そのものが不安定となり、関節軟骨が傷んで骨が変形していきます。こうした関節症性変化が進行していくと、最終的に腱板断裂症性肩関節症という状態になり、もはや腱板の修復手術だけでは症状の改善が望めなくなります。

 

 

このように、腱板断裂は病状が進行すればするほど手術後の機能回復が期待できなくなってしまうのです。また、肩関節の痛みで可動域が制限された状態(肩関節拘縮、凍結肩)になるまで悪化してしまっては、手術後に十分なリハビリを行なったとしても期待した結果が得られにくくなってしまいます。

 

若年者、仕事や趣味、スポーツで肩を酷使する方が腱板断裂を放置した場合修復手術後の成功率が低下(本稿「合併症について」を参照:再断裂率が上昇)してしまうだけでなく、より侵襲の大きい別の手術療法(上方関節包再建術やリバース型人工肩関節)が必要となる危険性があります

 

   リバース型人工肩関節(以下RSA: Reverse Shoulder Arthroplasty)による手術は、従来の解剖型人工肩関節置換術と比べて優れた臨床成績を持つ治療法ですが、十分な治療機器・インプラントに関するトレーニングと講習の受講に加え、腱板修復を含む肩疾患の手術実績が豊富な整形外科専門医のみに実施が許可される治療です。また、国内で使用する場合にはガイドラインによる規定を遵守する必要があります。これによると、腱板広範囲断裂の術後再断裂例などの特殊な場合を除いて、70歳未満の方へのRSA適応は極力避けるべき(例外あり)とされています。

 

もし腱板断裂の症状でお悩みのあなたが70歳未満であるなら、漫然と保存療法を続けるのではなく、手術(腱板修復術やRSAなど)を検討した方がよいかもしれません。

 

 もちろん当院でも腱板断裂と診断された方に保存療法を行うことがあります。ただし、これまでに述べた様に「腱板断裂に対して漫然とリハビリや注射による保存療法を続けることのデメリット」を十分理解された方は、手術療法に切り替える方が多いです。

 

 

 

手術療法について


現在、当院では皮膚を切開し三角筋を裂いて行う従来の手術(直視下)は行っていません。皮膚切開を最小限に抑えたMini-Openによる腱板修復術も行っていましたが、これまでの手術と同等かそれ以下のリスク(再断裂など)でさらに低侵襲な治療が受けられることが分かると、ほとんどの方は内視鏡(関節鏡)を用いた鏡視下腱板修復術(※必要に応じて肩峰下除圧術等を併用)を希望します。

 

このような背景から、当院では腱板断裂の手術治療として、身体への負担が少ない関節鏡視下手術(腱板修復術など)を第一選択として採用しています。

 

 

低侵襲手術・関節鏡視下腱板修復術について


『鏡視下手術』は小さい傷で行う肩周囲の筋損傷が少なくて済むため、従来の手術法と比べ、リハビリ面でもメリットが大きい治療法です。

 

直径4mmの硬性カメラで内部をしながら、関節内の処置を行います。専用の器具を出し入れするために約1cmの皮膚切開を数カ所設け、腱板の断裂形態に応じて修復します。様々な修復方法がありますが、当院では腱板の付着部であるfoot print部への接触面積・接触圧が高いとされる“Bridging Suture法”を中心に手術を行なっています。この修復方法は、糸の結紮部の突出が無いため刺激が少なく、手術時間も短縮されることから手術後の疼痛が少ないとされています。

 

参考文献)Park MC, et al. Part I : Footprint contact characteristics for a transosseous-equivalent rotator cuff repair technique compared with a double-row repair technique.J Shoulder Elbow Surg 2007;16(4):461-468.

 

 

【3D-手術アニメーション動画】 ※ Arthrex、 SpeedBridge

主に当院で行っているARCR(鏡視下腱板修復術):  Bridging Suture法、幅約2mmのTape(症例に応じて細いfiberwire併用)を使用。Tapeはfiberwireと比べ、腱板修復部の最大破綻強度が高い。

 

参考文献)Bisson, L. J., Manohar, L. M.: A biochemical comparison of the pullout strength of No. 2 fiberwire suture and 2-mm fiberwire tape in bovine rotator cuff tendons. Arthroscopy, 26 : 1463-1468, 2010.

 

 

 低侵襲・関節鏡治療の特徴 】 

  ・     正常組織の損傷が少なく、傷も小さい(約1㎝の傷が数カ所)

 

  ・     筋肉の損傷が少なく、手術後の回復が早い(従来の直視下手術と比べて)

 

  ・     肩関節内の正確な診断と治療が可能

   (肩甲上腕関節内の滑膜切除や肩峰下除圧術、関節唇形成術、上腕二頭筋長頭腱固定などの追加処置が可能)

 

これらは、患者さんだけでなく、執刀医にとっても望ましい手術といえます。

  従来法 Mini-open法 関節鏡視下腱板修復術

 正常組織(筋肉等)

に対する侵襲

×−△

△−○

 

(少ない)

手術後の痛み × △−○ ○−◎※1
肩関節内の診断能 × ×

抜糸までの期間

約10日−2週間 約10日−2週間 約7-10日間

手術時間と安全性

※2 ○−◎※2 ○−◎※1,2

  ※併用術式(肩峰下除圧術や関節唇形成術、上腕二頭筋長頭腱固定等)の有無により変動。

  ※手術に習熟した整形外科医が行うこと

 

 

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腱板断裂、千葉県、柏市、國府幸洋、名戸ヶ谷病院、整形外科、肩が痛い、関節治療センター、手術後、アンカー、bridging suture法、フットプリント

症例)腱板断裂に伴う肩関節症状が強く、画像検査において肩峰の骨棘と腱板の完全断裂を生じていた症例に対し、Bridging Suture法を用いた関節鏡下腱板修復術を施行しています。肩峰の骨棘によって腱板通過部の狭窄・衝突(インピンジメント)を生じていたため、この部分も関節鏡下に専用のデバイスによって削り取ることで減圧し、十分なリハビリの後に元の日常生活レベルとスポーツ活動へと復帰しています。また、この症例では骨に打ち込む先端部分が金属で補強された、PEEK素材(医療用強化プラスチック)メインのスーチャーアンカーを使用していますが、手術後、MRI撮像(頭部、腹部等)に支障はありません。

 

こうした手術の効果には個人差があり、腱板の再断裂や感染などのリスクを有します。また、関節機能を十分に回復させるためには、手術後の安静度と装具療法の遵守、後療法(リハビリ)として関節の可動域訓練、筋力増強訓練に取り組む必要があります。自己負担額:約10万〜20万円(高額医療の対象における年齢、年収や個室代などによる変動有り)

 

 

合併症について


・腱板再断裂

・アンカー脱転

・感染(<0.2%)

・神経障害、CRPS(<0.2%)

 

最も注意すべき合併症は、修復した腱板の再断裂です。手術後、間もない時期は修復した腱板がまだ弱いため、強い力をかけてしまうと再度、断裂してしまう恐れがあります。熟練した専門医であっても概ね一定の確率で生じ得ることが分かっています。過去の研究結果から、再断裂率は断裂の大きさに比例する傾向があることが分かっています。再断裂を予防するため、執刀医の指示やリハビリの注意点をしっかりと守り、無理をしないことが重要です。

 

【再断裂のサイズ別頻度】

 

小・部分断裂:〜1cm    →     数%

         中断裂:1-3cm → 10

         大断裂:3-5cm → 30

       広範囲断裂: 5cm〜    → 約40%

  

 

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解説)左から断裂サイズ(再断裂率)

             小断裂(数%) →    中断裂(約10%)  →    大断裂(約30%)。

仮に再断裂した場合でも、手術前より断裂サイズが縮小し、リハビリの効果と相まって肩の痛みや動きが改善していれば、再手術は不要なことが多いです。

 

また、腱板の修復にはスーチャーアンカーと呼ばれる糸付き骨内埋め込み型インプラントを使用します。引き抜き強度の高いものを使用していますが、骨が脆い(骨粗鬆症)方の場合、これが腱板に引っ張られる力に負けて、引き抜けてしまう場合があります(アンカー脱転)。軽度であれば保存的に経過を見ますが、突出して周囲の滑液包や筋肉を刺激する場合、修正や抜去を要する場合があります。

 

他の合併症として感染がありますが、手術中は肩関節内部へ灌流液を循環されるため、一般的な手術と比べ発症率は非常に低いとされています。ただし、傷口が赤かったり、落ち着いていた肩の痛みが増してきた場合には血液検査、抗生剤の投与を行うなどして、早期に適切な治療を行う必要があります。神経障害やCRPS(痛みの病気)は稀な合併症とされています。

 

 

手術後のリハビリについて


【肩関節外転装具】

手術後、修復した腱板の再断裂を予防するため、写真の様な肩関節外転装具(保険適応)を着用する必要があります。これにより腱板の修復部分にかかる負担を減らすとともに、手術後の痛みを緩和させる効果が期待できます。

 

装着期間は概ね3−6週間となります。

 

※ 腱板の断裂サイズや形態、手術を受けた方の背景や治癒力(生物学的活性や基礎疾患の有無、生活環境等)を総合的に考慮した上で決定します。

 

退院までに、担当スタッフ(理学療法士、看護師)が手指・手首・肘、首肩周辺筋群の基本的な運動や装具の安全な脱着方法、日常生活上の注意点などを指導します。

 


装具の着用期間は、修復した腱板に負担がかからない範囲での動作指導、可動域訓練を行います。その後、可動域の拡大をすすめ、筋力増強訓練へとリハビリを強化していきます。

 

元々の病状や手術後の経過にもよりますが、通常3−6ヶ月程度のリハビリを要します。2ヶ月程度で軽作業やウォーキング、4−6ヶ月頃からスポーツや重労働の復帰を段階的に許可することが一般的です。

 

通院でのリハビリテーションが望ましいと判断された方は、当院2階のリハビリテーション室において、外来担当リハビリスタッフによる理学療法を受けていただきます。紹介元のかかりつけクリニックでリハビリを継続される方もいますので、お気軽にご相談ください。

 

 

手術にかかる費用について


治療費は高額療養費制度の対象となります。

 

このため、患者さんが支払う費用は月額625万円+α(年齢、年収、入院期間などにより変動)となります。

※ 費用に関する詳細:

 

 

肩の痛み(腱板断裂)でお困りの方へ


当院では、変形性膝関節症に対する再生医療(自由診療)に対応していますが、腱板断裂においてはエビデンス(科学的根拠)が十分とは言えないため、実施に至っておりません。しかしながら近年、本疾患に対して再生医療を積極的に実施している施設が散見されます。今後、再生医療系クリニックで治療(自由診療)され、潜在的に腱板断裂の病状が進行した方が増加することが懸念されます。すでにクリニックや病院などの医療機関で関節内ヒアルロン酸注射や再生医療、リハビリを長期間受けている方は、もしかすると肩の腱板断裂かも知れません。

 

保存療法で症状が改善された方でも、時間の経過とともに腱板の断裂サイズが悪化していないか、改めてMRI検査で経過をみる慎重さも必要です。症状が悪化したら手術を検討するという考え方もあると思いますが、そのときには腱板の変性(脆弱化)と退縮、筋肉の脂肪変性が進んでしまい、手術(腱板修復術)後の機能回復が期待できない状態かもしれません。

 

 

『腱板断裂はタイミングを逸すると根本的な治療(構造的な修復)が困難となり得る疾患です』

 

『MRIや低侵襲・関節鏡手術などを含めた、高度な医療対応が可能な医療機関へ相談ください

 

 

 

 

関節治療センター外来  −肩関節・診療担当医表−


時間/曜日

診察室

番号

午前 1 國府 幸洋  ― ―  國府 幸洋

  國府 幸洋※2

 9:00-12:00 2  ― ―  ―   ―
午後 1 ― 

國府 幸洋※2

   浅野 健一郎※3

   渡邊 保彦※4

― 

― 

14:00-17:00  2 ―  ―  ―  ―  ― 

1  土曜、午前:第1、3週のみ → 外来予約・相談センターまでお問合せ下さい

2  専門外来の予約状況により対応可能です → 外来予約・相談センターまでお問合せ下さい

 

※3  第2、4水曜、午後 →  当日受診:可

※4  第3水曜、午後 →  当日受診:可

 

 


  当院へかかりつけの方

低侵襲・関節鏡視下手術を希望される方

→ 当院外来担当医に「肩・腱板断裂の初回受診を希望とお伝え下さい。

  初回受診・予約(保険診療)をお取りいたします。 

 

かかりつけでない方 (診察券をお持ちでない方)

外来予約・相談センターにて、「肩・腱板断裂の初回受診を希望」とお伝え下さい。

初回受診・予約をお取りいたします。

 

※ これまでの肩に関する単純レントゲンやCT、MRI検査の結果(CDなどの記憶媒体)をお持ちの方は、外来受診の受付時に提出してください。

 

1 土曜、午前:第24

2 火曜、午後は専門外来の予約状況により対応可能です → 外来予約・相談センターまで電話にてお問合せ下さい

 

 

 

外来予約・相談センター

TEL  04-7199-3787

 

受付時間:平日 9:00〜17:00

     土曜 9:00〜12:00