手外科 −手外科専門医による治療を柏で−

手外科とは


手外科とは上肢機能外科とも表され、肩関節から肘・手関節・指など上肢全体を専門とする診療科です。

 

以前は“手の外科”と呼ばれていましたが、日本手外科学会による専門医制度が立ち上げられる際に“手外科”と改められました。我々の手は、食事や書字、作業などの仕事を行ったり、服を着たり、音楽等の芸術活動を行ったりと、様々な活動に欠かせない運動器官です。

 

手は骨や関節だけではなく、神経、腱、血管、靭帯などから構成され、複雑で繊細な構造をしており、高度な運動・感覚機能を有しています。このように手は複雑かつ高度な動きを有しているため、小さな手の怪我でも日常生活が非常に不便になります。

 

手を含む“上肢”の整形外科疾患に関しては、このような手の特殊性に精通し、専門的な知識と技術を有する手外科専門医から治療を受けることが大切です。

診療内容


令和元年に着任後、リウマチ・手外科センターを開設いたしました。千葉県柏市だけでなく周辺医療機関(近隣の都道府県や東葛北部医療圏:柏、流山、松戸、野田、我孫子市)からの紹介患者さんを中心に、関節リウマチと手外科疾患に特化した専門的診療を行っています。

 

従来の単純レントゲン検査だけではなく、超音波検査やマルチスライスCT(腱の描出や3D-CTを含む)、MRI(3T)など最新の医療機器を駆使して診断し、保存療法から手術に至るまで、幅広く最適な治療法を提案します。

 

また手術関連設備として、約2mmの極細径内視鏡(S&N社製、最新型4K関節鏡システム)をはじめとして、手関節・肘用創外固定器、手術用顕微鏡、手指骨用の骨接合インプラント(2機種)を常備し、低侵襲でありながら高い治療効果を引き出すように心がけています。

主な対象疾患


下記の代表的手外科疾患を中心に、幅広い専門領域を診療しています。

外傷・スポーツ

手指・手関節の骨折(橈骨遠位端骨折、舟状骨骨折、中手骨骨折、

PIP関節脱臼骨折、マレット指)、舟状月状骨解離(SL離開)、屈筋腱断裂、伸筋腱断裂、母指MP関節側副靭帯断裂、上腕骨外側上顆炎(テニス肘)、TFCC損傷、尺骨突き上げ症候群、遠位橈尺関節不安定性など

関節疾患

変形性指関節症(ヘバーデン結節、ブシャール結節)、母指CM関節症、

STT関節症、遠位橈尺関節症、変形性手関節症(SLACSNAC wrist)など

炎症性疾患

 

狭窄性腱鞘炎(ばね指、ドケルバン病)、腱付着部炎、腱周囲炎、

化膿性関節炎、化膿性腱鞘炎など

末梢神経障害

手根管症候群、肘部管症候群、ギヨン管症候群(尺骨神経管症候群)、

特発性前骨間神経麻痺・後骨間神経麻痺、神経断裂など

腫瘍性病変

神経鞘腫、腱鞘巨細胞腫、線維種、ガングリオン、腱鞘ガングリオン、

骨内ガングリオンなど

拘縮、腱癒着

デュピュイトラン拘縮、関節拘縮(外傷後)、屈筋腱癒着など

その他

難治性疾患

舟状骨偽関節(骨壊死を含む)、キーンベック病(月状骨軟化症)、

難治性上腕骨外側上顆炎(滑膜ひだ障害)など

  【橈骨遠位端骨折に対する掌側ロッキングプレート固定、尺骨茎状突起骨折・TFCC断裂に対するテンションバンド固定・TFCC合術】

説明)橈骨遠位端骨折においてTFCC損傷を伴う場合、特に若年者では疼痛を残す場合があるため、尺骨茎状突起骨折の修復と同時にTFCCを縫合する必要があります。

  【舟状月状骨解離と橈骨遠位端骨折に対する経皮的鋼線固定】

説明)受傷後、早期の新鮮例。舟状骨アライメントを整復し、舟状月状骨(SL)解離部を経皮的に固定することで治癒。

  【PIP関節脱臼骨折に対する観血的整復術と骨移植、指用創外固定器の併用】

説明)PIP関節脱臼骨折において、関節面の整復位保持と早期可動域訓練を可能にする指用創外固定は有用な治療法の一つです。陳旧例の治療には十分な経験と高度な技術を要するため、受傷後早期に手外科専門医を受診すべき外傷の一つです。

  【第5中手骨粉砕骨折、手背部圧挫傷に対する創外固定】

説明)骨折部周囲の軟部組織損傷が強い場合、手用創外固定器を用いた治療法が有用です。

  【STT関節症に対するSTT関節固定術】

説明)STT関節症は、母指の付け根に痛みを生じるため、腱鞘炎や母指CM関節症と混同されやすい。進行した場合には、STT関節固定術により除痛をはかります。

  【変形性手関節症(SNAC wrist)に対する有頭月状骨間固定術(CL arthrodesis)】

説明)舟状骨偽関節を放置した場合、時間とともに変形性手関節症に陥り、疼痛と可動域制限が生じます。病期が進行した症例では、舟状骨を摘出した後に手根骨アライメントを整復し、有頭月状骨間を固定することで症状の改善が見込めます。

  【変形性手関節症(SLAC wrist)に対する4-corner fusion)】

説明)舟状月状骨解離は舟状月状骨間(SL)靭帯断裂により生じ、長期的に放置された場合、変形性手関節症に至り、痛みや可動域制限を生じます。病期が進行した症例では、舟状骨を摘出した後に手根骨アライメントを整復し、有頭月状骨三角骨有鉤骨間固定(4-corner fusion)することで症状の改善が見込めます。

  【特発性前骨間神経麻痺に対する神経束間剥離術】

術中肉眼像:一部神経束の “砂時計様”くびれ

 

説明)神経束の一部にくびれを生じるタイプには、顕微鏡下神経束間剥離術が有望な治療法とされています。当センターでは、手術前の評価として高精度・高解像度のエコーを用い”砂時計用”くびれを描出することで、身体への侵襲を最小限に抑える、選択的神経剥離を実践しています。

  【骨内ガングリオンに対する、低侵襲な病巣掻爬・骨移植】

手術前            手術後            創部、約1cm

 

説明)当センターでは、症例に応じて独自に考案した低侵襲手術法を用いて骨内ガングリオンを治療しています。傷の目立たない治療を希望される方は、一度ご相談ください。

  【キーンベック病に対する血管柄付き骨移植術と有頭骨部分短縮骨切術】

説明)キーンベック病(末期を除く)に対する治療では、一般に血行再建や除圧(圧潰防止)、骨形成促進作用が求められます。当センターでは、有頭骨部分短縮骨切り術による月状骨の除圧と、血管柄付き骨移植術(分節型では骨釘として応用)による血行再建を併用して行い、良好な成績をあげています。

他院で月状骨摘出+腱球移植術やGranner変法を提案された方も、上記方法で対応が可能な場合がありますので、資料をお持ちになられた上で、一度ご相談ください。

手術後のリハビリについて


毎週、手外科専門医と整形外科担当リハビリスタッフ(理学療法士、作業療法士)、看護師などを含めた多職種カンファレンスを行い、手術後のリハビリ進捗状況などについて検討を行っています。