自家培養軟骨移植による再生医療

− ひざ軟骨の損傷・欠損に対する新しい治療 −

 

スポーツや怪我(外傷性軟骨欠損症)、疾患(離断性骨軟骨炎)などによって傷ついた軟骨を修復する「再生医療」の一つです 軟骨は一度損傷を受けると自然に修復することがほぼ期待できない組織ですが、軟骨細胞そのものには増殖する能力があります。そこで支障のない部位から、患者さんの正常軟骨組織の一部を少量採取し、体外で特殊な培養技術(アテロコラーゲンゲルをスキャホールドとして用いる)を用い、十分な量と安定した形状(三次元培養)に増殖させます。そして得られた培養軟骨を軟骨欠損部に移植するという治療法が「自家培養軟骨移植」

 

 

2023年1月、名戸ヶ谷病院 整形外科 関節治療センター(千葉県柏市)は、自家培養軟骨移植(※)を保険適用で実施することができる再生医療の認可施設になりました。

 

この度、先進的医療であるロボット支援人工関節置換術に加え、PRP/APSによる再生医療、そしてこの自家培養軟骨移植の診療を始められることを大変嬉しく思います。

※ 自家培養軟骨移植:厚生労働省の認可を受けた施設でのみ行うことができる再生医療の一つ。2013年より保険適用。

 

 

再生医療を当たり前の医療に...

私たちは一歩先の医療を実践します。

 

副院長/ 整形外科部長 國府 幸洋

 


一部承認変更のお知らせ

再生医療等製品「自家培養軟骨ジャック(R)」(以下、「ジャック」)は、厚生労働省から一部変更承認を取得しました。従来は、培養軟骨が脱落しないようにする蓋として、患者さんの自身のすねの骨(脛骨)から骨膜を採取する必要がありました。この骨膜は、骨折した際に痛みを感じる部位であり、できれば避けたい処置です。この承認変更により骨膜の代わりに人工のコラーゲン膜を使用できるようになりました

自家培養軟骨移植 低侵襲 人工コラーゲン膜 名戸ヶ谷病院 関節治療センター


再生医療 自家培養軟骨移植 名戸ヶ谷病院 関節治療センター 整形外科 柏市 千葉市

自家培養軟骨移植とは


自家培養軟骨移植は、“軟骨損傷・欠損症、離断性骨軟骨炎”に対する最新の再生医療の一つです。

 

スポーツや怪我(軟骨欠損症)、疾患(離断性骨軟骨炎)などによって、比較的大きく傷ついた軟骨を修復する際に有用な治療法です。

自家培養軟骨移植 =  

培養した“自己” 軟骨組織を用いる再生医療

 

軟骨は一度損傷を受けると自然に修復することがほぼ期待できない組織ですが、軟骨細胞そのものには増殖する能力があります

 

そこで支障のない部位から、患者さんの正常軟骨組織の一部を少量採取し、体外で特殊な培養技術(アテロコラーゲンゲルをスキャホールドとして用いる)を用い、十分な量と安定した形状(三次元培養)に増殖させます。そして得られた培養軟骨を軟骨欠損部に移植するという治療法が「自家培養軟骨移植」です。

   自家培養軟骨移植は国内での保険適用が認められた治療法として承認されています。

 

この治療法は、変形性ひざ関節症に行われるPRP(多血小板血漿)療法(※自由診療)などと同様、患者さん自身の組織を用いることから、安全性が高いとされています。

 

この治療を実施するには、

1.定められた基準を満たし、厚生労働省の認可を受けた施設 

2.所定の研修を受けた整形外科専門医による執刀

を満たす必要があります。

 

【 培養した軟骨の外観 】

【 軟骨欠損の修復過程 】


【 よくみられる損傷部位】

【 アテロコラーゲン埋包・培養軟骨 】

【再生医療等製品の生産過程 】

 

 

 

 


軟骨損傷がもたらすもの


スポーツや怪我(外傷性軟骨欠損症)、疾患(離断性骨軟骨炎)などによって傷ついた軟骨は自然に治癒し難いことから、そこを起点として軟骨欠損部の拡大や摩耗(軟骨が薄くなる)が進行しやすいという特徴があります。

 

軟骨損傷を放置した場合

 

↓↓↓

損傷した軟骨のまわりの軟骨も傷んでいき、

長期的には関節痛や可動域制限、筋力低下などの病状が、

時間とともに悪化してしまうことが懸念されます。

 

 

 

自家培養軟骨移植 “以外” の治療について


保存療法として、関節内ヒアルロン酸注射やリハビリ、装具療法などが行われてきましたが、近年ではPRP(多血小板血漿)療法や脂肪培養幹細胞移植などの再生医療(保険適用外)が行われることもあります。

 

また外科的治療を受けるとしても、軟骨欠損が大きい場合や十分な自家骨軟骨を採取することができない(スポーツや職務動作に支障等)場合、従来から行われているマイクロフラクチャー(骨穿孔術)や自家骨軟骨移植では対応が困難なケースも少なくありませんでした。

マイクロフラクチャー法(骨髄刺激法)


 比較的小さな軟骨損傷に適応されます。血流の少ない軟骨組織の欠点を補うため、軟骨損傷部の骨に小さな穴をあけることでその深部の骨髄を刺激し、組織の修復を促します。

ただし、この方法で作られるのは線維軟骨とよばれる軟骨“様”組織であり、正常の軟骨ではなく耐久性が低い点に注意が必要です。 

自家骨軟骨移植(モザイクプラスティー


患者さん自身の正常な軟骨と骨とを、円柱状に一緒に採取し、軟骨損傷部へ移植する方法です。

移植組織を採取する部位は、後遺症を残しにくい非荷重部を選択します。

概ね4㎠未満の軟骨欠損が適用となります。


自家培養軟骨移植の適応疾患


1.外傷性軟骨欠損症、または離断性骨軟骨炎

 

2.移植を要する軟骨欠損面積が4㎠以上

 

3.概ね50歳以下(治癒率を考慮)

 

※ 他に適応となる治療法がないか、十分な診察と検査が必要となります。

詳細は担当医へご相談ください。


自家培養軟骨移植の治療スケジュール概要


自家培養軟骨移植 治療スケジュール どのくらいかかる? リハビリ 入院期間
自家培養軟骨移植術 治療スケジュール リハビリテーションスケジュール 名戸ヶ谷病院整形外科 関節治療センター 柏市 千葉県

 

1.担当医より診察・検査結果の説明

2.文書による承諾

3.アレルギー検査(牛肉、アテロコラーゲン)

4.第1回手術:軟骨組織採取

  ↓↓↓

  ↓↓↓   自家培養軟骨(ジャック®︎製造)

  ↓↓↓   〜1ヶ月間

5.第2回手術:培養軟骨の移植

6.リハビリテーション

7.経過観察(6、12ヶ月)

  ※ 手術後1年程で関節鏡による移植部の確認を行います。

 

【 解説 】

手術後は約4週間程度、手術した脚に体重をかけられません(免荷)ので、しばらくの間は松葉杖での生活になります。デスクワークであれば手術後、約1-2ヶ月での復帰が目安となります。半年から1年程かけてスポーツ活動や運動動作を伴う仕事への復帰を目指します。

 

【 一般的なスポーツ開始時期の目安 】

ひざへの衝撃・負荷が軽いスポーツ:6ヶ月以降

例.サイクリング

 

中等度負荷のスポーツ

小さな損傷/ 大きな損傷:8〜9カ月/ 912カ月以降

例.ジョギングやランニング

 

高度負荷のスポーツ:1218カ月以降

例.スポーツテニス、バスケットボール、フットボール等

※ 標準的な例であり、回復には個人差があります。 

 

 


【 自家培養軟骨移植を受けた患者さんのインタビュー 】 ※ 再生医療ナビ

 

 

 

 自家培養軟骨移植のまとめ 】 

1.自家培養軟骨移植は、軟骨欠損や離断性骨軟骨炎に対する“再生医療”の一つ

 

2.培養した“自己”軟骨組織を利用するため安全性が高い

 

3.厚生労働省の基準を満たした病院・整形外科専門医により提供される

ひざ軟骨再生医療の歴史


1743年頃には、一度損傷を受けた軟骨が自然に治癒することはないと述べられていました。1990年代から軟骨組織の培養に関する研究が進展し、スウェーデンのBrittberg教授らによりヒトへの臨床応用が開始されました。

 

本邦では1996年、当時島根医科大学整形外科の越智教授が臨床研究を開始し、その後、国内メーカーとの共同研究が進められました。この産学連携の結果、2004年から治験が開始され、2012年に日本で初めて培養軟骨としての製造販売が承認されました。

 

20134月より保険適用が開始され、多くの治療実績を蓄積し、われわれの手の届く再生医療として知られています。

 

軟骨とは


軟骨組織はケガなどで一度損傷を受けると自然には治らない組織です。このことは1743年にHunterという医師が述べているほど、昔から知られていました。

 

血液の中には、傷を治すのに必要な様々な細胞と栄養(成長因子あるいは増殖因子と呼ばれます)が含まれており、これらの成分が傷を治す働きをしています。しかし、軟骨組織にはもともと血管がありません。したがって、軟骨組織が損傷を受けても、それを治すための細胞も、細胞を増やすための栄養も供給されないので、軟骨は自然治癒しないのです。  

軟骨の役割


軟骨は体のどこにあって、どのような役割をしているのかご存知でしょうか?

 

軟骨の役割は、膝や肘などの関節の骨の表面を薄く覆い、関節の動きを滑らかにすることです。

 

関節の軟骨は、硬くてクッション性(弾力性)があり、なおかつ滑らかな軟骨(硝子軟骨といいます)でできており、その滑らかさはアイススケートで氷上を滑る際の10ともいわれています。そのため、軟骨の耐久性はきわめて高く、関節を動かしても軟骨組織が磨り減ることはほとんどないのです。

軟骨損傷はなぜ痛いのか?


軟骨は関節の中で骨の表面に存在する組織で、水分を多く含むことからクッション性(弾力性)に優れ、また表面が非常に滑らかでほとんど摩擦がないため、関節は運動に応じてスムーズに動きます。

 

しかし、一度スポーツや怪我、変形性関節症などより軟骨が損傷を受けてしまうと、自然に元通りに治癒することはほぼなく、関節内での炎症、滑膜細胞への刺激などを通じ、関節水腫(関節に水が溜まる)や歩行も困難になるほどの痛みといった症状を引き起こします

 

参照)J-TECTEIJIN

https://www.jpte.co.jp/business/regenerative/cultured-cartilage/index.html


自家培養軟骨移植にかかる費用について


「自家培養軟骨移植術」は本邦で2番目に保険が適用された再生医療であり、治療費は高額療養費制度の対象となります。

 

このため、患者さんが支払う費用は月額625万円程度(年齢、年収、入院期間などにより変動)となります。

※ 費用に関する詳細:再生医療ナビ(当サイトから外部リンクへ移動)

 

 

 

当院は再生医療等提供計画、特定細胞加工物製造届が受理されています


本邦で再生医療を行うには、再生医療等安全性確保法(実施可能な再生医療を行うための法律)に則り、再生医療等提供基準(厚生労働省令)に基づいた再生医療等提供計画を作成し、認定再生医療等委員会の厳しい審査を通過した上で、厚生労働省に受理される必要があります。

 

当院で提供する再生医療は、再生医療法*に基づいた厳しい施設基準を満たしており、安全性が確保された治療法を正しい手順で実施できる施設として、厚生労働省により登録されています。

 

  再生医療等提供計画(第二種/ 第三種):施設登録番号(PB3200039/ PC3200084)を取得済み


さらに、再生医療に用いる特定細胞加工物を製造するには再生医療等安全性確保法に則り、特定細胞加工物製造事業に関する届け出が厚生労働省に受理される必要があります。当院では、特定細胞加工製造届が厚生労働省に受理されております。

   特定細胞加工物とは再生医療等に用いられるヒトの細胞に培養、
その他の加工を施した
細胞加工物(再生医療等製品を除く)のこと。

再生医療等安全確保法 再生医療 APS療法 PRP療法 名戸ヶ谷病院 整形外科

関節治療センター外来  −診療担当医表−


時間/曜日

診察室

番号

午前 1 國府 幸洋  ― ―  國府 幸洋

 9:00-12:00 2  ― ―  ―   ― 
午後 1 ― 

國府 幸洋※1

   浅野 健一郎※2

   渡邊 保彦※1

― 

 ― 

14:00-17:00  2 ―  ―  ―  ―  ― 

※1、2 専門外来の予約状況により対応可能です → 外来予約・相談センターまでお問合せ下さい


  当院へかかりつけの方

自家培養軟骨移植を希望される方

→ 当院外来担当医に「自家培養軟骨移植の初回受診を希望とお伝え下さい。

  初回受診・予約(保険診療)をお取りいたします。 

 

かかりつけでない方 (診察券をお持ちでない方)

外来予約・相談センターより、「自家培養軟骨移植の初回受診を希望」とお伝え下さい。

初回受診・予約をお取りいたします。

※ これまでの膝に関する単純レントゲンやCT、MRI検査の結果(CDなどの記憶媒体)をお持ちの方は、出来る限り外来受診時に提出してください。 

 

 

外来予約・相談センター

TEL  04-7199-3787

 

受付時間:平日 9:00〜17:00

     土曜 9:00〜12:00 

 

 


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